暑い夏がようやく終わりました。
初めまして、ICBA代表の丸山明栄です。このたびICBAのサイトを新しくし、運営委員によるブログも再スタートしました。本や文庫活動に関わることだけでなく、日々の出来事や気がついた事なども書き込んでいきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。
先日、「日曜美術館」という番組で、7月19日から開催されている瀬戸内国際芸術祭がとりあげられました。瀬戸内海の島々を舞台に、自然や暮らしと触れ合いながら制作された作品が展開されている現代アート展です。国内外から75組を数えるアーティストの作品は、過疎化、高齢化が進んだ島に新たな景観をつくり、人をひきつけています。島の良さが再発見され、島の活性化につながることが期待されています。
実際にアートがはじまった人口3300人の直島は、高齢者と猫ばかりで、出歩く人もほとんどいなかった島でしたが100倍以上の観光客が来てくれる町へと変わり、島の人は、「現代アートが地域に融合するのも面白いかもしれない」と、個人でも感心を持つ人が増えはじめたそうです。
豊島の人里離れたところにひっそりと佇む黒い小屋は、15000人の心臓の鼓動の持ち主に思いを馳せる「生命の記録」。同じようでみな違う心臓音は少々恐くもありますが、神秘的でもあります。人口80人の甲生地区にある網で覆われた家「ハーモニカ」は、住んでいた人の思い出を島の記憶として表現しています。人が去った後に残された物の多さにたじろぐ気持ちが前むきに変わりそうです。
醤油やもろみ、ソーメン、ごま油、オリーブ油など、私達が日常的に使うこれらの産地がみな小豆島だということに驚きます。でもよくよく考えれば、小豆島は、古来より船の停泊地として全国の物産が集積され文化の交流地点だったのです。新しく入ってきたものを果敢に受け入れ自分の物にする逞しさは、小豆島が長い歴史の中で培われたものだと納得します。この小豆島にも数多くのアーティストが作品を展開しています。300年以上も守り伝えてきた農村歌舞伎舞台と対話するのは、開放的な劇場のような空間となった「小豆島の家」。5000本の竹が住民の手によって切り出されたそうです。
巨大な廃墟として放置された銅の精錬所をアートスポットとして蘇らせた犬島アートプロジェクト「精錬所」は、鏡が視覚をまどわすなど、驚きと愉しさを味わいながら、これからのことを考える仕掛けがたくさんあります。
それにしても多くの人(若い人が結構多い)がこのアート展に足を運んでいます。今年の異様な暑さや足の便の悪さを考えると、ちょっと驚きです。なにしろ作品を見てまわるためにはひたすら歩かねばならないのですから。(以前このアート展の発祥の地、直島を訪れた時、よく歩いたことを覚えています) それでもここに人が惹き付けられるのは、島の美しい自然に心洗われるからということもありますが、何よりも、その自然と一体となって織りなされるアートとの出会いが、今の私達の悩みへの手がかりになりそうだと思えるからだと思います。
フランス人のボルスタンスキーは、「生命の記憶」を豊島に設置した理由を、こう語っています。「豊島は地中海のように美しい。人が時間をかけて遠くからこの美しい島に来て、暮らし方や行く末を考えることが大切だから」
瀬戸内海はほんとうにおだやかで美しく、その奥深い広がりの中に身をおくと、ゆったりとした大きな気持ちになれます。いつも余裕なくせき立てられている今の時代にあって、別の時間が流れているような心地よさを感じます。そしてそれは、あらゆるものがめまぐるしく変化していくなかで、いつまでも変わらない価値あるものだと思います。そんな美しい島にしかけられたアートはおもしろく、メッセージをもちうるアートはさらにおもしろいと思いました。
このアート展は3年ごとの開催を目指す継続するプロジェクトです。時を経ての変化を見ることも楽しみです。機会があれば是非また訪れてみたいと思っています。
瀬戸内国際芸術祭2010サイト http://setouchi-artfest.jp/
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Mickey♪ (火曜日, 28 9月 2010 00:30)
豊島で美術館を作っている、内藤礼はうちの親戚です。
長い間、現代美術をやって頑張っています。
角川からエッセイも出しています。
私はまだ行っていないのですが、今週末、SAKIが行きます。
今年の夏からは、特に盛り上がっているようなので楽しみですね★
MICKEY♪ (火曜日, 28 9月 2010 00:31)
追加です。
http://www.benesse-artsite.jp/teshima-artmuseum/index.html